ナカの目のつけどころ 火災発生時の安全な避難について
もし外出先の建物で火事に遭遇したら…
一般的に、火災の避難時に気を付けなければいけないのは、炎よりも煙と言われています。火災の煙は一酸化炭素などの有毒なガスを多く含みます。落ち着いて、煙の流れてくる向きなどから火の元の方向を確認し、安全な避難経路を判断しましょう。煙は階段などを伝わって、上の方へ一気に広がっていきます。短い距離であれば息を止めて出口へ急いでください。ある程度の距離がある場合は、鼻と口をタオルや洋服の袖で押さえ(マスクも有効ですね)、姿勢を低くして進みましょう。
ビルでの火災時、エレベーターは途中で止まってしまう恐れがあるので、地震の時と同様に階段で逃げましょう。このとき、内階段は煙が充満する危険性があるので、なるべく外階段を使用します。階段が使えない時は避難器具を使って屋外へ避難しましょう。火の元よりも下の階や横方向に避難することが望ましいですが、炎や煙が迫ってきているなど、建物の外まで避難できない時は、外の空気が吸えて炎や煙を避けることができる場所(バルコニーや屋上など)へ一時的に避難し、風上側で救助を待ちます。いずれにしても、建物内は煙が充満しやすいので、なるべく早く屋外に出ることが大切です。
避難経路、確認していますか?
さて、実際の避難経路についてですが、建築基準法では特定の用途の建物に対し原則として「二方向避難」といって2つ以上の直通階段を設けるよう定めています。これは一つの避難路が塞がれていた場合でも、もう一方の避難経路を確保するためです。
いざという時のために、日頃から避難経路図や避難誘導灯、避難器具の設置場所等を探して、避難経路を確認しておきましょう。
避難経路案内図
一方、例外として条件を満たした小規模ビルでは避難経路が一方向で良いとされています。2001年9月に起きた新宿区歌舞伎町の雑居ビル火災も、避難経路は階段1つだけでした。大きな被害となった要因は避難経路の数だけではありませんが、この火災がきっかけとなり2003年6月に消防法が改正され、1階段のみの建物のうち、特に火災時の危険性が高い建物を「特定一階段等防火対象物」と名付けて規制が強化されました。
特定一階段等防火対象物への規制
「特定一階段等防火対象物」(小規模複合用途ビル)とは
新築、既存ビルとも、次の1)および2)の条件に該当するビルのことをいいます。
1)特定用途(表1に該当する用途)が3階以上もしくは地階に存するもの。
2)階段が1つしかないもの(屋外に設け得られた階段等であれば免除 図1)また、階段が2つある場合でも、間仕切り等により1つの階段しか利用できない場合(図2)も含まれる。
この特定一階段等防火対象物に該当した場合、以下のような規制があります。(各自治体の火災予防条例等により異なる場合あり)
- 階段室における自動火災報知設備の感知器の設置基準に関する事項について
- 再鳴動機能付きの自動火災報知設備の受信機の設置に関する事項について
- 室内又は室外の音響が聞き取りにくい場所がある防火対象物の音響装置に関する事項について
簡単な操作で避難できる避難器具の設置に関する事項について(いずれか1つを設置)
- 安全かつ容易に避難できる構造のバルコニーなど(直接外気に開放され、転落防止の為の手すりの高さが1.1m以上あり、概ね2㎡以上の床面積を有するもの。)に避難器具を設ける。
- 避難器具が常時、容易かつ確実に使用できる状態にあること。(避難はしご(固定式はしごに限る)、避難用タラップ(固定式に限る)、滑り台、滑り棒、緩降機などを常時組み立てられた状態で設置してある状態。)(また避難器具の使用方法の表示もこの状態に合わせ整合性の取れた表示にすること。)
1動作で容易かつ確実に使用できる避難器具を設ける。(開口部を開口する動作と保安装置を解除する動作を除く。)
- 避難器具の設置場所の明示に関する事項について
- 避難はしごに関する基準の明確化に関する事項について
新製品の開発
この消防法改正を受けて、避難器具の設置に関して、従来からある救助袋・緩降機取付具が新たに「特定一階段等防火対象物」に設置できる避難器具として認められることになりました。さらに、一動作で容易かつ確実に使用できるものという新たな避難器具の開発要請が、総務省消防庁から(社)全国避難設備工業会を通じてあり、ナカ工業も金属はしごメーカーの1社として指名されました。(社)全国避難設備工業会とメーカー数社で意見交換を重ね、「ワンタッチ展張」「連続避難」「落下防止機能」といった特長を盛り込むことになりました。
この課題に取り組むにあたり、開発担当者がまず行ったことは、工場の外壁に設置されていた点検用のはしごを降りてみることでした。その担当者は高所恐怖症だったこともあり、高所の窓から身を乗り出し、さらに反転してはしごを降りることの恐怖と危険性を強く実感したと語っています。その体験から、窓から出た際に体の向きを変えずに前向きのままはしごに乗り移り、外壁を背にして降りていく方式が採用されました。
はしごの降り方(前向き移乗/後ろ向き移乗)
そして2003年にナカ工業が開発したのが「レスキューライン」です。(当時のレスキューラインを改良したものが現在のレスキューラインFXです。)
レスキューラインFXは各階の窓から操作が可能で、外壁に取り付けるため室内空間を圧迫せず、改修工事にも対応。使用しないときはコンパクトに収納できます。また防犯上、地上からの操作はできません。
一動作(ワンタッチ)ではしごが開く
直列降下方式により、複数人の連続避難が可能
保護バーにより、避難降下時の落下防止
国家検定品
このレスキューラインは新築・改修を問わず、毎年多くの建物への設置が進んでいます。既存のビルや、非常用階段や避難バルコニーを設けるスペースが無い場合でも、レスキューラインを設置可能な場合があります。
レスキューラインFX 施工事例
レスキューラインFX 施工事例
レスキューラインFX 展張時
レスキューラインFX 収納時
避難器具に関してお困りの際は、ナカ工業までご相談ください。
お知らせ
2022年8月2日(火)の朝日新聞京都版に、「ビル外壁はしご設置」についての記事が掲載されました。
ニュース
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2022.08.09メディア