ナカの目のつけどころ

マンション火災からの避難方法

マンション火災の発生件数について

日本の火災件数について総務省消防庁の消防統計(火災統計)によると、令和5年(2023年1~12月)における建物火災が20,974件、そのうち3,712件がマンションを含む共同住宅の火災となっています。また東京都に関しては、令和5年中の一般住宅(戸建住宅)の火災578件に対し共同住宅が1,091件と、共同住宅の火災の方が多く発生しています。戸建住宅でも共同住宅でも、火災の危険性はあると改めて認識しておきましょう。

万が一火災が発生した時には、戸建住宅の方がマンションに比べて避難しやすいと思われる方もいるのではないでしょうか。たしかに2階からなら飛び降りることもできるかも知れませんが、3階以上からは難しいと思われます。しかし避難しにくいと思われるマンションでも、バルコニーに設置されている避難ハッチを使用したり、隣の住戸のバルコニーとの間にある隔て板を蹴破ることで炎や煙から逃れることができます。大切なことは、戸建住宅でもマンションでも、いざというときに慌てず行動できるようにしておくことです。

もしマンションで火災が発生してしまったら

まずは「周囲に知らせる」そして「通報」「消火」「避難」

マンション内で火災を発見したら、まずは大声で「火事だー!」と叫び、周囲の住民に火災を知らせます。マンション内で火災が発生すると火災報知器が作動しますが、火災の原因によっては作動しないケースもあるので、火災を発見したら近くの火災報知器を作動させましょう。そして身の安全を確保しつつ、119番に通報します。また火災報知器のある場所には消火器が設置されています。火災が小規模で初期消火できる状況であれば、消火器で消火を試みましょう。しかし消せないと思ったら、すぐに逃げてください。

火災が発生したら

いざ避難するとなったら

非常階段

逃げるときには煙を吸わないように、鼻と口をハンカチやマスクで覆って避難します。火災時には火事による停電や機械の故障によりエレベーターが途中で動かなくなり、中で取り残されてしまう危険があるので、エレベーターは使用せずに、非常階段を使って避難しましょう。高層マンションでは非常用エレベーターが設置されていますが、非常用エレベーターは消防隊が消火作業および搬出作業に使用するためのものですので、こちらも使用しないようにしましょう。

なお、非常階段までの経路に炎や煙がある場合など、非常階段を使用した避難が困難な場合には、ベランダに設置されている避難器具(はしごや救助袋など)から階下へ降りることができます。ただし、そのような避難器具は全室に設置されていない場合も多くあります。自室にない場合はベランダから隔て板を蹴破って、設置場所まで移動する必要があります。自室の階の避難器具が設置されている場所は、事前に確認しておきましょう。(11階以上の階層では避難器具の設置自体が無い場合もあります)

避難はしご

ナカ工業製 避難器具「タスカール」の使い方

  1. 上蓋を少し持ち上げ、チャイルドロックを手前に引きはずします。

  2. 上蓋を90°まで開けます。(上蓋はロックされます。)

  3. 下の階に人がいないことを確認し、プッシュレバーを足で押して、はしごを伸ばします。

  4. はしごが伸びきったことを確認し、落ち着いて降りてください。

日頃から行っておくと良いこと

いざ火災に遭遇しても慌てないために、お住まいの部屋からの避難経路を必ず確認しておきましょう。非常階段や避難ハッチの位置や使い方、ベランダ間の移動方法などを確認しておくとともに、複数の避難経路を想定しておくことも必要です。1つの避難経路しか想定していなかった場合、非常時にはその経路が使えない、ということもあり得ます。様々な状況を想定し、1つの経路だけでなくなるべくたくさんの避難経路を確認しておくようにしましょう。

さらに、居住者が50人以上のマンションの避難訓練については、防火管理者が消防計画で避難訓練の実施計画を作成することが義務付けられています。また、施設内に飲食店を含む複合型マンションの場合は、年2回以上の消火訓練と避難訓練の実施が義務付けられています。いずれにしても、入居しているマンションで避難訓練が開催されていたら、積極的に参加し防災への意識を高めましょう。

【参考】

  • 総務省消防庁."消防統計(火災統計):令和5年(1月~12月)における火災の状況(確定値)について(令和6年11月8日)"

    https://www.fdma.go.jp/pressrelease/statistics/

  • 東京消防庁."令和6年版 火災の実態(速報版):第一章 火災の概要(PDF)"

    https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/learning/elib/kasaijittai/r06.html